行政書士試験の知識は実務で役立つ?開業して実際に感じた試験と実務の違い

行政書士

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行政書士試験では、憲法、行政法、民法、商法・会社法など、さまざまな法律を勉強します。

これだけ多くの法律を勉強するわけですから、これから行政書士を目指す人や合格したばかりの人の中には、

「試験で勉強した知識は、実際の行政書士業務でどれくらい使うのだろう?」

と疑問に思う人もいるかもしれません。

私は企業法務の仕事を経験した後、行政書士として開業しました。

実際に行政書士として仕事をしてみて感じるのは、行政書士試験で勉強した知識が実務で役立つかどうかは、何の業務をするかによって大きく違うということです。

そして、もう一つ感じていることがあります。

それは、行政書士試験と行政書士実務は、そもそも別物として考えた方がいいということです。

今回は、行政書士として実際に仕事をして感じた、試験勉強と実務の違いについて書いてみたいと思います。

結論:民事法務なら役立つ。許認可中心なら直接使う知識は少ない

まず、「行政書士試験の知識は実務で役立つのか」という質問に対する私の答えは、

「何の業務をするかによる」

です。

たとえば、契約書などの民事法務を扱うのであれば、試験で勉強した法律知識が役立つ場面はたくさんあります。

民法はもちろん、案件によっては商法や会社法、個人情報保護法などの知識も関係してきます。

このような仕事をするのであれば、試験勉強で身につけた知識と実務とのつながりを感じることは多いと思います。

一方で、許認可や自動車関係の手続を行っていると、試験で勉強した法律知識をそのまま使う場面はそれほど多くありません。

私自身、車庫証明や自動車登録などの仕事をしていますが、それらを処理するために、行政書士試験で勉強した憲法、行政法、民法、会社法などを日常的に駆使しているわけではありません。

そのため、

「行政書士試験の知識は実務で役立つ」

とも、

「行政書士試験の知識は実務では役に立たない」

とも、一括りにはできないと思っています。

結局は、自分が行政書士として何を扱うのかによって変わります。

行政法より実務で必要なのは「その手続への理解」

行政書士試験の中でも、特に大きな割合を占めているのが行政法です。

そのため、

「行政書士になったら行政法を毎日のように使うのではないか」

と思う人もいるかもしれません。

しかし、私が実際に行政書士として手続業務を行って感じるのは、実務で直接必要になるのは、行政法そのものへの理解というより、その手続への理解であるということです。

たとえば、ある行政手続を代理するのであれば、

何が要件になっているのか。

どのような書類が必要なのか。

誰が申請できるのか。

どこに申請するのか。

どのような流れで手続が進むのか。

こうした、その手続固有の知識を理解しなければ仕事はできません。

行政書士試験で行政法を勉強したからといって、個別の許認可や手続の方法まで分かるわけではありません。

だから実務では、扱う業務ごとに必要な知識を身につけていく必要があります。

ただし、これは、

「行政法を勉強する意味がない」

という話ではありません。

個々の行政手続は、何の根拠もなく存在しているわけではありません。

その基盤には行政法の考え方があります。

日々の申請業務で試験勉強の知識を直接使う機会が少なかったとしても、その手続が成り立っている背景を理解するという意味では、行政法を学ぶ意味はあると思っています。

「実務で直接使うか」と「学ぶ意味があるか」は、別の問題です。

憲法も直接使う機会は少ない。でも学ぶ意味はある

憲法についても似ています。

少なくとも、私が現在行っている行政書士業務の中で、憲法の知識を直接使う機会はほとんどありません。

だからといって、行政書士試験で憲法を勉強する意味がないとは思いません。

法律は、何でも自由に定めることができるものではありません。

法律は憲法による制約の中で存在しています。

行政書士は、法律に基づいて定められた手続を扱う仕事です。

その法律がどのような枠組みの中で存在しているのかを理解するという意味で、憲法を学ぶことには意味があると思います。

ここでも、行政法と同じです。

実務で憲法の条文や判例を直接使う機会が少ないことと、法律を扱う人間として憲法を理解しておく意味がないことは、イコールではありません。

試験で身につく「調べる力」と実務の調査力は別物

行政書士試験の勉強について、

「試験勉強を通じて、法律を調べる力が身につく。それが実務でも役立つ」

という考え方もあるかもしれません。

しかし、私自身は、試験で身につく調べる力と、実務で必要になる調べる力は別物だと感じています。

実務では、最初から「この法律について調べてください」と問題が与えられるわけではありません。

目の前に具体的な案件があって、まず何が問題なのかを考える。

何を確認しなければならないのかを考える。

そして、どの情報に当たれば答えにたどり着けるのかを考える。

必要な情報そのものを探すところから始まります。

私の場合、こうした情報へのアプローチについては、行政書士試験の勉強よりも、企業法務時代に身につけた「法律関係の仕事の勘所」が役立っています。

分からないことがあったときに、何を調べればいいのか。

どこに情報がありそうなのか。

どこまで確認すれば仕事として出せるのか。

こうした感覚を企業法務の実務を通じて身につけていたため、それを行政書士になってからも使ってきました。

試験問題を解くための能力と、実際の案件について必要な情報へアプローチする能力は、同じではないと思っています。

「試験に受かったから実務ができる」とは最初から思っていなかった

私は行政書士試験に合格したときから、

「試験に合格したから行政書士実務ができる」

とはまったく思っていませんでした。

行政書士試験の勉強と実務は別物だという話自体は、行政書士の世界では比較的よく聞く話だったからです。

そして実際に開業してみても、その認識は大きく変わっていません。

試験で行政法を勉強したからといって、すべての許認可申請ができるようになるわけではありません。

民法を勉強したからといって、それだけであらゆる契約書を作れるようになるわけでもありません。

行政書士として何らかの業務を扱うのであれば、その業務について改めて勉強し、必要な知識を身につける必要があります。

行政書士試験への合格は、行政書士実務の完成を意味するものではないと思っています。

では、行政書士試験をもっと実務的にすればいいのか

ここまで読むと、

「それなら行政書士試験をもっと実務に近い内容にすればいいのではないか」

と思うかもしれません。

しかし、私はそれも難しいと思っています。

行政書士が扱うことのできる業務は非常に幅広いからです。

許認可と一口に言っても、その種類はさまざまです。

自動車関係の手続を中心に行う行政書士もいれば、別の許認可を専門にする行政書士もいます。

契約書などの民事法務を扱う人もいます。

それだけ幅広い実務がある中で、特定の業法や特定の手続だけを取り上げて、

「行政書士になるならこれを勉強しなさい」

と試験科目にするのも違うと思います。

かといって、行政書士が扱う可能性のある実務をすべて試験範囲にすることも現実的ではありません。

そう考えると、行政書士試験で実務能力そのものを確認しようとすることには、どうしても限界があります。

行政書士試験は「実務を教えるための試験」ではないと思う

では、行政書士試験でこれだけ法律を勉強することには、どのような意味があるのでしょうか。

これはあくまで私自身の捉え方ですが、

「これくらいの法律知識を持っていない人に、法律に基づいて定められている手続を他人に代わって行わせるわけにはいかない」

というラインを確認する意味があるのではないかと思っています。

行政書士は、法律に基づくさまざまな手続について、依頼者から依頼を受けて仕事をします。

その仕事をする人間が、法律の基本的な仕組みをまったく理解していないというわけにはいきません。

だから、行政法を実務で直接使う場面が少ないからといって、行政法を学ぶ意味がないわけではありません。

憲法を直接使わないからといって、憲法を知らなくてもいいという話でもありません。

一方で、行政書士試験に合格したからといって、個別の行政手続について詳しくなるわけでもありません。

試験では法律を扱う資格者として必要になる基礎を確認し、個別の実務については合格後に身につけていく。

私は、行政書士試験と行政書士実務をそのように捉えています。

まとめ|行政書士試験と行政書士実務は別物として考えた方がいい

行政書士試験で勉強した知識が、実務で役立つかどうか。

私の経験から言えば、答えは**「何の業務をするかによる」**です。

契約書などの民事法務を扱うのであれば、民法、商法、会社法、個人情報保護法など、試験で学んだ知識が役立つ場面はたくさんあります。

一方、許認可や自動車関係の手続では、試験知識を直接使うことよりも、その業務固有の手続を理解することの方が重要になります。

だからといって、実務で直接使わない試験科目に意味がないとは思いません。

行政法には行政手続の基盤を理解する意味があり、憲法には法律がどのような制約の中で存在しているのかを理解する意味があります。

そもそも行政書士の業務は幅広く、そのすべてを行政書士試験で教えることは現実的ではありません。

行政書士試験に合格することと、行政書士として実務ができることは別です。

しかし、法律に基づく手続を依頼者に代わって行う以上、その前提となる法律について一定の知識を持っている必要はある。

行政書士試験は実務を覚えるための試験ではなく、法律を扱う資格者になるための試験。

実際に行政書士として仕事をするようになって、私はそのように感じています。

※本ブログはフリューゲル行政書士事務所が運営しております。

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